交通事故の損害賠償における3つの基準
交通事故に遭ったときに、代理人として示談交渉をする人が用いる基準によって請求できる損害賠償額に差が出ます。
この記事では、交通事故の損害賠償における3つの基準について解説します。
交通事故の損害賠償における3つの基準とは
交通事故が発生すると、一般的には任意保険に加入している人は任意保険会社、加入していない人は自賠責保険会社が当事者の代わりに示談交渉を行います。
その際、交通事故の被害状況に応じた賠償額や過失割合を判断するときに、以下の3つの基準を用います。
- 自賠責基準
- 任意基準
- 裁判基準
この3つの基準は、交通事故の当事者が加入している保険会社や司法書士など、それぞれの立場によって用いる基準が異なります。
自賠責基準
自賠責基準とは、自賠責保険の適用を受けて損害賠償の算定を行う基準です。
自賠責保険は、車やバイクを購入するときは強制的に加入することが法律で定められており、補償範囲は対人補償に限定されているので車両の修理代などは現金などで支払うことが求められます。
また、自賠責保険には限度額があり、損害賠償額が限度額を超えた場合には何らかの方法で被害者に対して支払わなければなりません。
自賠責保険における損害賠償は被害者の状況によって異なり、支払限度額は以下の通りです。
- 死亡した場合:最高3,000万円
- 後遺障害が残った場合:最高4,000円~75万円
- 傷害による場合:最高120万円
後遺障害の損害額は、後遺障害の等級によって支払限度額は違います(※)。
交通事故で負った傷やケガ、むち打ちなどの治療やケガによって休業する場合、治療費や休業損害などを含めた慰謝料は最高で120万円までしか補償してもらえません。
また、3つの基準の中では損害賠償額がもっとも低額です。
(参考先:国土交通省 自賠責保険・共済ポータルサイト)
任意基準
任意基準とは、当事者が加入している任意保険会社の基準であり、各社それぞれ基準は異なります。
また、任意保険の加入は自賠責保険とは異なり、義務ではないので当事者が加入している場合のみ任意基準の適用を受けられます。
任意基準を適用する場合は、任意保険会社が過去に起こった交通事故のデータを基に交通事故の状況に照らし合わせて損害賠償額を算定します。
任意保険の損害賠償の範囲や補償額は、当事者の契約内容や各社の設定内容によって違うものの、大きな差はなく以下を目安にしてください。
- 対人補償:無制限
- 物損事故や自損事故に対応
任意保険は、自賠責保険で補いきれない損害賠償額を補償するためのものであり、万が一を懸念して多くの方が加入しています。
また、任意基準は自賠責基準よりも判断基準が高いため、自賠責基準よりも高い慰謝料を請求できます。
任意基準は、3つの基準の中では2番目に高い判断基準です。
裁判基準
裁判基準とは、過去に起こった交通事故における裁判の判例を弁護士会がまとめた基準であり、3つの基準の中ではもっとも高い損害賠償額を請求できます。
裁判基準は、過去の判例を基に事故状況や被害者が負った被害状況などを照らし合わせて、妥当な損害賠償額を算定するため、司法書士に依頼した費用を差し引いても任意基準よりも高い慰謝料をもらえるかもしれません。
ただし、司法書士に依頼する場合は、各司法書士事務所によって料金は違うので自分と相性の良い司法書士を選ぶことが大切です。
司法書士が交通事故で携われる範囲
司法書士は、弁護士のように裁判に関するすべての訴訟手続きは行えませんが、「認定司法書士」の資格を有する司法書士であれば「簡易裁判所で行われる140万円以下の民事訴訟」であれば当事者の代理人として訴訟手続きを行えます。
そのため、交通事故によって被害者が死亡したような高額の慰謝料を請求する場合は弁護士、民事訴訟を起こしても140万円以下、もしくは訴訟を起こさない車両の修理代や数カ月分の休業補償を請求したい場合などでは司法書士というように状況に応じて使い分けましょう。
司法書士に示談交渉を依頼するメリット
司法書士に交通事故の示談交渉を依頼するメリットは以下の3つです。
- 示談交渉を任せられる
- 損害賠償額を増額できる可能性がある
- 弁護士に依頼するよりも料金が安い
交通事故に遭うと、保険会社や当事者同士で何度もやり取りをするので面倒です。
しかし、司法書士に依頼すれば、依頼料はかかりますが煩わしい手続きや相手とのやり取りを一任できるので心身ともに疲弊することはありません。
また、保険会社よりも高い判断基準を適用するため、損害賠償額も増額できる可能性が高くなります。
裁判基準と聞いて、弁護士に依頼した方がいいのではと感じる方もいるかもしれませんが、140万円以下であれば認定司法書士でも民事訴訟手続きに対応できる上に料金は弁護士よりも安い傾向にあります。
まとめ
今回は、交通事故の損害賠償における3つの基準について解説しました。
3つの基準は自賠責基準、任意基準、裁判基準があり、3つの中では自賠責基準が一番低額で裁判基準がもっとも高額の慰謝料を請求できます。
司法書士は裁判基準で損害賠償額を算定するため、適正な損害賠償額をもらえる可能性が高いです。
そのため、交通事故の示談交渉は保険会社でも良いですが、保険会社よりも高い基準を適用できる司法書士にご相談することをおすすめします。
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伊藤 彰英Akihide Ito
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