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損害賠償制度における財産的侵害と精神的侵害について解説します

交通事故や契約トラブルで損害を受けたとき、適切な賠償を求めるのが損害賠償制度です。

しかし、損害賠償の仕組みは複雑で、どのように請求すべきか悩むことも多いでしょう。
本記事では、損害賠償の基本的な考え方から種類、財産的・精神的侵害の違い、そして請求できないケースまで、わかりやすく解説します。

損害賠償とは何か

損害賠償とは、後で詳しく述べますが、契約上の債務不履行や不法行為によって他者に被害を与えた際に、その被害を償うために金銭を支払うことです。
この制度は、他者の行動などによって被害を受けたひとが、その損失から回復するために設けられています。

被害者にとって適切な賠償金を受け取ることは、日常生活を建て直し、将来的な生計維持のためにとても大切な要素です。
ただし、知識がないまま賠償請求を始めると、さまざまな壁にぶつかることがあります。

具体的には、以下のとおりです。

 

  • 交渉をどう進めるべきか
  • 自分の状況や主張をどう伝えるか
  • 妥当な賠償額はいくらか
  • 話し合いで解決できないときはどうするか

 

以下では、損害賠償に関する疑問点について詳しく説明していきます。

損害賠償と損失補償の違い

損失補償とは、合法的な行政活動や公共事業で生じる、財産上の損失を補てんする制度です。

損害賠償との大きな違いは、原因となる行為の性質にあります。

損害賠償は違法行為や契約義務の不履行が前提となりますが、損失補償は適法な行為による損失でも補てんします。

また、損害賠償は個人間でも発生しますが、損失補償は主に公的機関と個人の間で適用される制度です。

両者の根本的な違いは、行為に違法性があるかどうかという点にあります。

損害賠償と慰謝料の違い

慰謝料は損害賠償の一部分にあたり、被害者が経験した心の苦しみや精神的な痛みを金銭で償うために支払われるものです。

慰謝料は損害賠償という大きな枠組みの中の一項目として位置づけられています。

つまり、両者の関係は「全体と部分」の関係にあり、慰謝料は損害賠償に含まれる要素のひとつなのです。

民法における損害賠償には2種類ある

民法が定める賠償制度は、契約上の義務を果たさなかった場合に発生する債務不履行と、他者の権利を侵害するなどの違法行為から生じる不法行為の2種類があります。

①債務不履行

債務不履行に基づく損害賠償とは、契約などの約束を守らなかったことで生じた被害への金銭補償です。

債務の存在と不履行があれば、債権者は賠償請求ができます。

ただし、債務者に責任がない事由で履行できなかった場合は、賠償責任を負わないことがあるので注意が必要です。

②不法行為

不法行為による損害賠償とは、故意や過失で他者の権利を侵害した加害者が、被害者に対して損失を補償することです。
被害者は不法行為で生じた経済的損失と精神的苦痛の両方について賠償を請求できます。

財産的侵害と精神的侵害について

損害賠償は、財産的損害と精神的損害の二つに区分されることがあります。

賠償請求の法的根拠は案件の性質によって異なり、不法行為では民法709条と710条、債務不履行では民法415条です。

これらの規定により、加害者は被害者に対して財産面と精神面の両面における損害を賠償する義務を負うことになります。

財産的侵害とは何か

財産的侵害とは、金銭的に算出できる被害のことです。

この損害は「積極損害」と「消極損害」の2種類に分けられます。

積極損害は実際に支出した費用や失った財産を指し、治療費、通院交通費、入院費用、修理費などが含まれます。

消極損害は得られなくなった利益のことで、休業損害(仕事を休んだ際の収入減)や逸失利益(後遺障害による将来の収入減)などです。

精神的侵害とは何か

精神的侵害とは、お金で評価することが難しい心の苦しみのことです。

民法710条では「財産以外の損害」と表現され、これが慰謝料の根拠です。

精神的侵害に対する賠償(慰謝料)は、生命侵害や身体傷害、名誉毀損などの場合に認められます。

その他にも、プライバシー侵害、氏名権・肖像権の侵害、公害による人格権侵害、生活妨害、家族関係の侵害なども含まれます。

交通事故の場合、慰謝料は次のとおりです。

 

  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料

 

ものが壊れたり失われたりした場合は、原則として慰謝料は原則として認められませんが、例外的に認められることもあります。

損害賠償が生じないこともあります

債務不履行や不法行為による損害があっても、賠償請求ができない場合があります。

時効の成立は賠償請求ができなくなる主な原因です。

損害発生から20年、または損害を知ってから3年経過すると請求権が消滅します。

また、相手がどんなに努力しても避けられない理由、たとえば大きな地震や台風などの天災による損害については、賠償請求ができないことがあります。

まとめ

損害賠償制度は、債務不履行や不法行為による被害を金銭で補償する仕組みです。

財産的侵害と精神的侵害の両面から賠償が検討され、慰謝料は損害賠償の一部として位置づけられています。

しかし、時効や不可抗力により賠償請求ができないケースもあるので注意が必要です。

損害賠償問題は法的知識が必要となるため、適切な補償を受けるためには、司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。

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伊藤 彰英Akihide Ito

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